1817年の冬、沼地でピップ少年(アンソニー・ウェイジャー/ジョン・ミルズ)は続けざまに父と母とを失い、姉とその夫ジョー・ガージェリーに養われていた。ある日ピップは両親の墓に詣でたところ、恐しい脱獄囚(フィンレイ・カリー)に捕えられ、翌朝、食物とヤスリを持って来いと、脅かし半分に頼まれた。
ピップはその約束を果したが、脱獄囚は逮捕されてしまう。その囚人はピップが姉に咎められないよう、自分が食物を盗んだと独白。ピップはその様子を見送った。
その後、ピップは近くの大邸宅に住んでいる狂女といううわさのあるハヴィシャム嬢(マーティタ・ハント)から遊び相手として呼ばれた。そこには彼と同年の養女エステラ(ジーン・シモンズ/ヴァレリー・ホブソン)という美少女がいて、彼を案内した。
彼女は高慢で、態度も横柄。明らかに彼を見下していたが、ピップは一目見て彼女に心ひかれてしまう。
ハヴィシャム嬢はカーテンを下した真暗な客間の中に、ローソクをつけて座っていた。あたりは白いほこりが積り、くもの巣が張っていた。毎週一回、彼はエステラを見るのが楽しみで屋敷へ通ったが、満十四の誕生日が来て、この訪問を止めなければならなかった。義兄のジョーに鍛冶屋の弟子となり働き始めたからである。
少年ピップとミス・ハヴィシャム 右は大人のピップを演じたジョン・ミルズ
かくて六年が過ぎ、ピップが二十歳になった時、ロンドンからジャガース(フランシス・L・サリヴァン)という弁護士が訪ねて来て、彼が大きな財産の相続人に指定されたこと、ロンドンに出て紳士となること、贈り主はだれであるか将来その人自身が現われるまで問わぬこと、ピップという名を絶対に変えぬこと等を告げた。ピップは承諾し、ロンドンへ赴き、ハーバート・ポケット(アレック・ギネス)という青年と同宿した。彼には六年前、ハヴィシャム嬢の邸で会ったことを想い出し、奇遇を喜んだ。
ピップは有り余る生活費を支給され、紳士修業を残らずしたが、精神的に紳士となるには至らず、成り上り者気質を捨て切れない自分自身を認めないわけにはゆかなかった。そのころ、フランスで教育を受けたエステラがロンドンに現われ、彼女に再会したピップの思慕の情はあらためて燃え上ったが、エステラは名のある男を片端から征服するのだという。
その夜、ピップのところへ片眼に黒い布をした老人が訪れて来た。マグウィッチというのが老人の名。彼は少年の日、ピップが食物を与えた脱獄囚で、ピップを相続人に指定し紳士にした慈善家であった。彼はオーストラリアで、羊で大もうけをしたのであるが、英国に帰ればお尋ね者の身の上である。彼がピップとの再会を喜んだのも束の間、密告者が彼の帰国をかぎつけたので、ピップはハーバートの助けで、マグウィッチの身を隠させ、亡命に同伴しようと決心する。
別れを告げにハヴィシャム嬢を訪れると、エステラも来ていて、ドラムルという紳士と結婚するという。別れ去ろうとした時、ハヴィシャム嬢のすそに、だん炉の火がついて、彼女は無惨に焼け死んでしまう。
好機を見てピップはマグウィッチをボートに乗せ、英仏連絡船を待ったが、密告者のコンペイソンが警察ボートで現われた。マグウィッチは、密告者と海中で格闘し、コンペイソンは連絡船の外輪に巻込まれて死んだ。
マグウィッチは絞首刑を宣告されたが、病気で苦しんでいる時、ピップが訪れ、彼が幼い時に別れた娘が美しく成人していること、その娘を自分が愛していることを告げると、マグウィッチは満足して息を引取った。
マグウィッチの死と同時に全てを失い、心身の疲労で、ピップは熱病を患い、故郷のジョーの許で介抱される。意識を回復したのは丁度一カ月後であった。
ピップが”満足荘”を訪れると、暗い客間にエステラが一人座っていた。ドラムルが結婚を拒絶したので、義母と同じ心境に陥り、今後は隠遁生活を送るのだと言う。
ピップが彼女を愛し続けている気持に変りはなく、彼はカーテンを引裂き、部屋中に満ちた陽光の中でエステラを抱きしめた…。